極上恋慕~エリート専務はケダモノでした
それからは、詮索するのは気が引けて、素性を聞きだそうとは思わなかった。
互いの名字が珍しいという他愛ない話から、この店には1年前から通うようになったこと、環が31歳で万佑が29歳であることを明かした程度。
どこの企業に勤めていて、家がどのあたりなのか、それすら口にもしなかった。
おそらく、彼もあまり詮索されたくなかったのだろう。
そんな中、最も話しやすかったのは、先に話題にしていた恋愛事情だった。
環は3日前に振られ、万佑は浮気を目撃したばかりで、別れを切り出していないという現状の詳細を打ち明けると、一気に距離が縮まったから不思議だ。
やはり、失恋した者同士、異性とはいえ共感できるところがあるのかもしれない。