極上恋慕~エリート専務はケダモノでした
春の麗らかな日々は、のんびりしているようで目まぐるしい。
学生時代から何度も味わってきているのに、社会人になってからは瞬きを数回繰り返しただけで、ひと月が終わろうとしているような速さに感じられるものだ。
「――そうですか、かしこまりました。では、情報解禁ということで。……えぇ、予定通り6月の就任で大丈夫です。コンサルティング業も、最初は少し影響することがあるとは思いますが」
『それは仕方ありませんよ、永縞さんのお人柄と手腕があれば、そう簡単に人脈がなくなるはずもないでしょうし。こちらとしては、以前提示させていただいた条件を飲んでいただければ構いません』
出張から戻り、落ち着いた頃に葛城からの連絡が入った。
ブルーメゾン側からの条件は、年収や仕事量などの基本的な内容と、最初の1年はコンサルティングの仕事を少しずつ手放していく時間に当てるというものだった。
社を後にするので、当然整理はついているのだが、それでも人脈はなくなるわけではなく、話の流れでコンサルティングに似たことも出てくるだろうという、葛城の配慮から出た条件だ。