極上恋慕~エリート専務はケダモノでした
「ごめん。部長に掛けたつもりだった」
専務室にいる環は砕けた口調で話すけれど、万佑はそうもいかない。
受話器越しの彼の声は少し低くて、なんだかくすぐったく感じる。
「そうでしたか。あいにく部長は離席されていますが……」
周りに気付かれないよう、できるだけ自然にふるまうけれど、胸の奥はドキドキと鼓動がうるさい。
「また掛け直すよ」
「あの、なにかお伝えすることはございますか?」
「あぁ、そうだなぁ……。じゃあ、清家さんに〝愛してる〟って、よろしくお伝えください」
一瞬にして頬が熱くなり、耳先まで火照っていく。
思わず口元を押さえ、目を丸くしてデスクトップの画面の一点を見つめた。
「万佑、聞いてる?」
「は、はい……。かしこまりました」
「じゃあ、また」
「失礼いたします……」
終話しても、彼の声が頭の中でこだましている。
仕事中に愛してるなんて言われたこともなければ、こんなことをする人だと思わなかったので、完全に不意を突かれてしまったのだった。