極上恋慕~エリート専務はケダモノでした

 万佑の意向を彼も理解してくれていた。
 だから、すれ違ってもアイコンタクトと挨拶をするくらいで、話すこともない。
 他の社員と談笑している彼を見かけては、密かに胸を高鳴らせていた。
 女性社員の話は、聞けば聞くほど妬いてしまうけれど、同じように接されたら隠し通せる自信がない。

 それなのに、こんなタイミングで〝愛してる〟なんて言われたら……。

(環さん、好きっ!)

 万佑は両手で顔を覆い隠しながら、デスクに突っ伏して悶える。
 仕事が終わったら、環に連絡を入れようと決め、勢いよく顔を上げて気合いを入れ直した。


「どうしたの? 具合悪い?」
「すみません、大丈夫です」
「でも、顔が真っ赤だよ?」

 ランチから戻ってきたのか、部長が声をかける。
 40代半ばでスタイルのいい部長は、白髪交じりのグレーヘアが洒落ている紳士だ。

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