極上恋慕~エリート専務はケダモノでした

 到着したエレベーターでは、あえて距離を置いて乗る。
 本当は隣にいたいけれど、自制しなくてはと万佑は正面を向き、彼を視界から外した。

(環さんと話したいなぁ)

 就任以来、環は多忙な日々の中にいて、ろくにデートもできていない。
 帰宅が遅いこともあって、以前よりも電話で話す回数も減ったし、休日はそれぞれ友人や仕事絡みの交流があったりして、自宅で会うことも叶わずじまいだ。
 環は電話もメッセージもいつでもいいと言ってくれたけれど、スケジューラーの分刻みの予定を見ると、気が引けてしまう。


「お先に失礼します」

 途中階で何度かエレベーターが停まった後、広報部が入るフロアで万佑は降りた。

(さて、今日も頑張ろうっと。午前中に来客があるから、先に準備を……)

「きゃっ!!」
「静かに」

 会議室の前を歩いていると、突然背後から手を掴まれ、強引に連れ込まれてしまった。

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