極上恋慕~エリート専務はケダモノでした
勢いに負けて、広い会議室の壁に背を預ける。
すると、目の前に環が立ち塞がり、じっくりと見つめてきた。
「こういうことはしないって……」
「うん、ごめん」
そう言いながらも、環はどんどん距離を詰めてくる。
ドアの向こうを歩く足音に息を潜め、誰にも気づかれぬよう存在感を消そうとするけれど、環は気に留めずに万佑の頬に触れた。
「あぁ、やっと触れた」
「たっ……永縞専務、どうされたんですか?」
この距離でやっと感じる控えめな香水の匂いに、胸が締め付けられる。
万佑も触れたいと思っていたし、ふたりきりで過ごせる時間が恋しかった。
だけど、会いたいと言えば、多忙な彼の重荷になってしまいそうだし、理解がないと思われたくなかったのだ。
今は、そんな気持ちを抑えるために、理性を働かせなくてはいけないのに、彼は遠慮なく万佑の手を自分の胸元に導いた。
「っ!!」
ネイビーのサマースーツに触れただけなのに、鼓動が大きく跳ねた。