極上恋慕~エリート専務はケダモノでした

 キスを期待してしまう自分を戒めようと、万佑はちょっとだけ潤んだ瞳に彼を映して、また俯いた。


「かわいい瞳に、ちゃんと俺を映して」

 顎先を操る彼に上を向かされた。


「ごめん。今日だけ許して? ……お願い」
「んっ」

 奪われた唇が熱い。絡まる舌を伝って、彼の味が入ってくる。
 万佑は、彼がどんな顔をしているのか知りたくて、薄らとまぶたを開けた。

(綺麗……)

 会議室に響くキスの音が背徳的で、身体の奥が火照ってきた。初めて見てしまった彼がキスをする顔は、朝に似つかわしくない艶があって、押さえつけていた欲が煽られていく。

 唇が離れれば、互いに余韻を味わうように見つめ合い、彼の大きな手が名残惜しそうに頬を包む。


「今夜、俺の家で待ってて」

 もう一度、触れるだけの短いキスをした環は、万佑の手に自宅のカードキーを預けて、先に会議室を出ていった。

< 237 / 276 >

この作品をシェア

pagetop