極上恋慕~エリート専務はケダモノでした

「ところで、環くんは今日なにしてるの?」
「今日も会食だって言ってた。実はね、彼も同じ会社で働いてて、専務になったの」
「……それって、社内恋愛よね? 万佑ちゃん、あんなに避けてたのに」
「うん。でも仕方なかったの。彼は彼で、社長から直々にヘッドハンティングされたから、公表されるまでは私にも話せなかっただろうし。私が異動で悩んでた時も、きっと彼だって悩んでたはずなのに、あんなに背中を押してくれたんだもの。……だからね、そういうこともあって、私たちの関係を誰にも明かしてないんだ」
「なるほど、そうだったのねぇ」

 環に連絡しようとしていたミミは、スマートフォンをカウンターに置いて、ジョッキを傾ける。


「でも、なんだかドキドキするわね。社内恋愛ってどんな感じなのかしら。しかも、あの環くんとでしょ? ……やだぁ、想像しただけで興奮しちゃう!」
「ミミちゃん、一応私の彼なんだから、勝手にいろいろ想像しないで」
「いいじゃない、妄想くらいさせてよ。頭の中でなにをしようと、誰も傷つけないんだから」
「そうかもしれないけど」

(実際に、いろいろあったけど……さすがに話せないなぁ)

 万佑は、環と仕事中に目が合ったり、出勤するなり会議室に連れ込まれたことは黙っておこうと思った。
 ふたりだけの秘密は、心の中で大事にしておきたいからだ。

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