極上恋慕~エリート専務はケダモノでした
「面倒ですよね、私。愚痴るし、泣くし。……ごめんなさい、付き合わせて」
散々愚痴って泣いて、浮気者の印象を勝手に持たれて……。さすがに面倒に思っているのではないかと、少し申し訳なくなった。
「謝らなくていいよ。話しかけたのは俺の方だし、万佑ちゃんと話せてよかったと思ってる」
「ありがとう。でも、もうこの話は終わりにします。楽しい話、しましょう」
指を交換しながら涙を拭う。楽しい話なんて思いつかないけれど、作った微笑みを浮かべたら、目尻からまた涙が零れた。
指先だけでは足りず、指の背や手の甲を使ってみたけれど、とめどなく溢れてくる。
「万佑ちゃんの気が済むならそれでいいけど、まだ足りないんじゃない?」
環が残っていたハイボールを飲み干し、氷を足す。彼もお酒が進んでいるようだけど、酔っている感じがまったくしない。
「私も、おかわりください」
「はい」
これ以上は、きっと同じことを話すだけだ。
終わりの見えない愚痴に付き合わせるのは悪いので、とりあえず飲んで忘れることにした。