極上恋慕~エリート専務はケダモノでした
「それで、どうしてプロポーズを受けないわけ?」
「まだ付き合って1年も経ってないし、私が彼に見合うのかも分からないし、ちょうど仕事が楽しくなってきたから、キャリアアップの道もあるし……。それから、結婚したとして、その後の毎日に漠然とした不安があるの。なにがって言われても答えられないような、そういう感じ」
心の内を明かした万佑は、ずっと抱えていた悩みを吐きだせて、少し心が軽くなった。
正直なところ、環と予定が合わず、会えない日が続いていることに、どこかホッとしている自分もいる。
会えば、彼に返事をしなくてはいけないと考えてしまうし、愛される度にどうしようもなく情けない気分になるからだ。
環はなにも悪くない。自分が覚悟を決めて、前に進めないだけ。
分かっているのに、憧れた結婚の切符を掴んでいいものか、ここにきて冷静になってしまうのだった。
「よかった。まさか、環くんが16連敗してるからだなんて言ったら、どうしてやろうかと思ってた」
「そんなこと言わないよ。知り合った時はどんな人なのかって思ってたところもあるけど、すぐに気にならなくなったもの」
じゃあいいけど、と言って、ミミは電子煙草を深く吸った。