極上恋慕~エリート専務はケダモノでした
(冗談よ、冗談。ミミちゃんに合わせただけで、そんなつもりはないはず)
「いいクリスマスを」
「ま、またね! ミミちゃん」
ミミが常連客と腕を絡め、足取り軽く夜に消えていく。
その背中に手を振って見送りながら、環を横目で見上げ、様子をうかがった。
「っ!!」
彼と目が合って、慌てて視線をブーツの足元に落とす。
(なんで今、見つめ返してくるの?)
環が言ったのは冗談だってわかっていても、意識してしまう。
さっきまでとは違うように見えたその視線すら、意味があるのかと考えてしまった。
「戻ろう。寒いし」
「そ、そうですね」
環がドアを開け、先に入れてくれる。
席までの数歩でさえ、後ろを歩く彼が気になって仕方なかった。