極上恋慕~エリート専務はケダモノでした
先にミミと会計を済ませていたサラリーマンたちも帰っていった。
しんと静まりかえったに店内は、不自然なほどに静かだ。
「静かだな」
環が席をひとつ置いて、座り直した。
(永縞さん、お酒強いんだな……。全然酔ってない)
今度は目が合わないように、そっと環の様子を探る。
作ったばかりのハイボールは、何杯目なのだろう。ペースを落とさずに淡々と飲んでいる彼は、静けさに耳を澄ませているようだ。
何時になったのかと、万佑はスマホをバッグから出す。
(まだイブか……)
23時過ぎの表示を見て、心がぐったりした。
こんなに飲んでも、愚痴っても、泣いても、今日が終わってくれない。
最低な夜は、早く過去にしたいのに。
「……雪、降ってきたみたいだね」
環に言われて、入口に視線を投げれば、いつの間にか降りだした雪が、ガラスの向こうでちらちらと舞っているのが見えた。