極上恋慕~エリート専務はケダモノでした
「そろそろ帰る?」
環が気を使って声をかけた。雪も降ってきたし、時間も遅い。
だけど、万佑は少し考える素振りをして視線をそらす。
「永縞さんは?」
「俺はまだしばらく飲むけど」
「じゃあ、私も」
そう、と返され、互いに自分のグラスを傾けた。
「……永縞さん、なんで離れて座ってるんですか?」
彼から接近してきたのだ。
サラリーマンに絡まれているのを助けてくれただけだとしても、きっかけは彼だった。
だから、離れられるといろいろと気になってしまう。
やっぱり面倒と思われていたのかな、とか。本当は帰ってほしいのかもしれない、とか。
ひとりで飲みたい気分なのかもしれないし……。
(どうして気になるんだろう。別になんだっていいのに)
気の利かない女と思われたっていい。
だけど、どうしても嫌われたくはない。
酔った頭で考えていると、環が小さく笑った気がして、万佑は顔を上げて視線を交わした。