極上恋慕~エリート専務はケダモノでした
「誰もいないのに、近づいたら警戒されると思って」
「警戒なんて、そんなことしませんよ」
「傷心に付け込む、悪い男かもしれないのに?」
「傷ついてるのはお互い様です」
遠慮なく返せば、環が表情をやわらげて微笑む。
その微笑みに、胸の奥がときめいたように動いた気がして、万佑はすかさず視線をそらして俯いた。
淀みない瞳は力強く、キリッとした彼の端正な顔にお似合いだ。
甘さと凛々しさが同居した顔立ちは、正直言ってタイプではあるけれど……。
「……ど、どっちにしても、浮気するような人よりは、きっとマシです」
おもむろに、環が距離を詰めてきた。
椅子に座り直し、万佑に身体を向けた彼の視線を右に感じる。
16連敗の男だなんて知らなかったら。せめて、会社で知り合っていたら。
失恋した夜じゃなかったら――。
(好きになってたかもしれない……)