極上恋慕~エリート専務はケダモノでした

「万佑ちゃん」

 呼ばれて顔を上げれば、環の熱や欲が見て取れる瞳があった。
 お互いに酔っているのかもしれないが、男女だからこそ作れる、甘くて危険なムードがふたりの間に漂う。


「永縞さん」
「なに?」
「……私、なにが正しい恋なのか、よくわからなくなりました」

 環の大きな手が、さりげなく万佑の頭に触れる。
 その手は、断りもなく髪をそっと撫でるのに、優しさに満ちていて、少しも嫌じゃない。


「……俺も」

 環が、万佑の後頭部に回した手で主導権を握り、さらに距離を縮めた。
 心の中まで見透かすようにじっと見つめられたら、視線が彷徨ってしまう。

(キス、されちゃうのかな……)

 流されてはいけないと思いつつも、少なくとも環の優しさに心を許してしまいそうな自分がいる。
 出会ったばかりなのに、彼は悪い人ではないと、自分を傷つけるような男ではないと思えるのだ。

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