同期以上、彼氏未満
「浦野さん、右手つきあたりの処置室にいらっしゃいますので」


「ありがとうございます!」


はやる気持ちを押さえ、早歩きで処置室へ向かい、


「昴、大丈夫?」


声をかけて部屋をのぞいた。



病院へ着くまで、いろんな想像をした。


体にいっぱいチューブがついてて、会話もできないんじゃないか。


ICUで生死の境をさまよってるかもしれない。


そもそも、面会謝絶とかだったら、どうしよう。


私の想像は、悪い方向へどんどん突き進んでいった。


どうしてもっと早く、ワガママにならなかったんだろう。


こんな形で離ればなれになってしまうんなら、好きだって伝えればよかった。


一生そばにいて、って言えばよかった。


昴が隣で笑っていてくれたなら、それだけでいいのに。


他には何も、望まないのに。


裕和と暮らしてみて、昴の良さを痛感したはずなのに、その気づきにフタをしてしまったから、こんな別れになってしまうんだ。


昴の笑った顔を、もう一度だけ見たい。


大きくてあったかい手にふれたい。


できるなら、キスして抱きしめたい。


そんな想像が頭の中をかけめぐったまま、処置室に入った。


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