同期以上、彼氏未満
「ほな、帰ろっか」


昴は書類を持って立ち上がった。


私は慌てて、昴のカバンをつかんだ。


「メグ、持ってくれるんか?


ありがとな」


「ほんとに、どこも痛くないの?」


「平気やって」


昴は私の顔をのぞきこみ、涙の跡を指でなぞった。


「泣くほど心配してくれるやなんて、俺は幸せもんやなあ」


「だって・・・まだ私、伝えたいこと言えてないのに、離ればなれになったらどうしようと思って」


「伝えたいことって、なんや?」


背の高い昴を見上げ、ちゃんと目を見て、私は告げた。


「昴が、好き」


昴は、一瞬驚いたような顔をしてから、


「ほんまに?」


笑ってくれた。


「知っとると思うけど、俺もメグが好きやで」


「うん」


「俺んちで、ゆっくり話そか」


「うん」


その時急に、目の前に人影があらわれた。


「浦野、そろそろ邪魔してもいいか?」


「野沢課長?」


腕組みして、私たちをにらんでる。


「いつから、いはったんですか?」


「お前らが、好きだって言い合う少し前だ」


「それは、すんませんでした」


「会社戻って報告しておくから、浦野はそのまま帰っていいぞ。


杉森、ついててやれよ」


ニヤッと笑ってから、野沢課長は入口へ向かっていった。


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