同期以上、彼氏未満
私は、ずるかった。


きちんと裕和と別れてから、昴にふれるべきだったのに。


順番を守らなかったから、裕和も昴も傷つけてしまった。


リセットしなきゃ。


時間は戻せないし、裕和とは元に戻れないけど。


一度、ゼロにならなきゃ。


そんなことを考えながら、黙々と荷造りを進めた。


実家はあきれ果て、納戸化していた私の部屋をしぶしぶ空けてくれた。


「バツイチで出戻るよりいいじゃん」


弟の一言で、両親はあきらめたようだった。


裕和との同棲生活は、数ヵ月で幕を閉じた。


3月になっても寒い日が多く、私の気持ちを映し出したようなどんよりとした曇り空ばかりだった。


「恵、うちら今年で31歳になるんだよ」


「で?」


「で、じゃないし。


昴とくっついちゃえばいいじゃん。


私みたいに貪欲にならないと、結婚できないよ」


詩織は、バツイチ課長と6月に結婚するんだ。


相手がバツイチだから、両親は相当反対したらしいけど。


詩織は押し切り、幸せを手に入れた。


昴は、つかず離れずの距離のまま。


裕和は、挨拶もしてくれないまま。


私は、ダラダラ日々を重ねるまま。


< 99 / 111 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop