先輩の彼女にしてもらいました
桜さんは、彼が機嫌が悪いと言っていたけど、私には彼が弱っているように見えてならなかった。

「陸上のこと。まだ今なら間に合うと思うよ、もう一度始めることをちゃんと考えてみたら?」

「先輩?」

「蒼井さんには、俺と離れてじっくりと考えてみる時間が必要だとおもうんだ。だから」

言い終わって先輩は、少し寂しそうに俯いていた。

「い、嫌です。イヤッ、先輩どうしてそんなこと」

私は立ち上がり急いで彼の元へ駆け寄った。

彼が、私と別れたがっているようにしか聞こえなかったから、半泣きになりながら彼の横から抱きついてしまった。

彼は、一瞬びくっと体をかすかに揺らせる。
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