先輩の彼女にしてもらいました
こんなのは、練習にもならない。大体時田と俺じゃ大人と子供くらいに実力が違う。身長だって20センチ以上の差がある。

そんなことは初めから、わかっているはずじゃないか、時田。

それなのに、どうしてお前は、そんなに必死になって俺を負かそうとするんだ?

俺からボールを奪おうとする時田は、勢い余って派手にスリップしてしまい床に転がってしまう。

「くっそう」

コートに片膝をついて、悔しそうに拳を握る時田を見て、俺は思わず立ち止まってしまう。

青山にすぐさまボールを奪われたけど、俺は時田に駆け寄り、手を差し伸べた。

「大丈夫か?」

汗だくの時田は俺から視線をそらし、差し出したその手を取らずに自分で立ち上がる。

俺は、そんな時田を見て、何を言ってやればいいのかわからない。

だけど、ふと思った。

そうか、時田は闘っているんだ。

なにと?

俺と?

いいや、ひょっとしたら自分自身と、かな。

< 393 / 450 >

この作品をシェア

pagetop