先輩の彼女にしてもらいました
いつもの俺なら、あともう少し速く走れるはず、もう少し高く飛べたはず、とついつい落胆してしまうんだ。

ようやく岳の前に回り込むと、ニッとわざとらしく笑顔をむけられる。

「つばさ、どうだよ?そろそろ燃えてきたか?」

ドリブルしながら、岳がムダ話をする。真面目なこいつにしては珍しい。

「は?何言ってんだ?」

「つばさ、恐れるなよ、このボールみたいに取られたら取り返したらいいんだ。もう一度あの子の気持ちを取り戻せよ」

「バッカやろ、まだ奪られてねーしっ、だいたいバスケと恋愛は違うだろっ」

「一緒だよっ、俺は奪い返したぜっ」

岳は笑ってシュートをうち、すかさず俺はカットしようと腕をのばす。

は?奪い返したってお前、桜のことを言ってんのか?

こんな時になんちゅうクサイこと言ってんだよ、岳。
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