先輩の彼女にしてもらいました
「先輩、待ってー」

「ほらほらもっと思いきり走って、蒼井さん」

「は、ハイッ」

初めて先輩に名字を呼ばれた。そんなことだけで胸が高鳴る。名前で呼ばれた訳じゃないのに。

信号で待っていてくれる先輩のもとへたどり着くと、私の肩からスルッと鞄をとられた。

「ほら持ってあげるから、さあいくぞー」

先輩が笑いながら言うと同時に信号が青になり、また、走りだしたので、慌てて追いかけた。

「どこいくんですかー?」

「ついたらわかるよ、まだいけるだろ、とばすぞ」

先輩はスピードをぐんぐんあげるので、私も本気で追いかけていく。

陸上の短距離選手だった私は足には自信があるけれど、もう何ヶ月もまともに走っていない。

でも、先輩の背中を見て、走り方を思い出したように足が自然と高く上がってくる。

「うっわー、はえー、追いつかれる」

後ろを振り返りながら、先輩はまだ余裕そうに笑っている。

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