先輩の彼女にしてもらいました
スターターの合図が頭に浮かぶ。


バンッ


耳に焼き付いたピストル音で、スタートから飛び出す時は地面すれすれにでる。

上体をすぐにあげずに30メートルは我慢する。

腕を大きく振り歩幅を広げるとぐんぐんスピードに乗っていき、そして私は風になる。

ああ、なんて気持ちいいんだろう。

坂道でさえなければもっと走りやすいけど。

ゴールに定めた地点まで、あと残り50メートルで、加速していくと先輩の驚いた様な顔に近付いていく。

ボーっとした先輩が、持っている鞄を全て落としてしまうのを横目に見ながら私はなおも坂道を上がっていく。

あ、あれ止まらないよ私、なんで?

「ちょっとちょっと待って、ストップストーップ、俺んちここだから」
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