はつ恋の君をさがしてる
「ほぅ?そんな優秀な人材ならなぜ審査業務をさせてないんだ?」
副社長の射るような視線に隣の須藤さんが固まるのがわかった。

「あの……それは私が高卒だからだと思いますが……。」

自分のことだしちゃんと言わなくちゃと思ってなんとか発言してみる。
それを聞いた副社長がキッと課長を睨むような視線を送る。
「本当にそれが理由ですか?」
それはとても冷めたブリザードが吹き荒れそうな声で、会議室内が凍りついたような気がした……

気不味い沈黙に課長が恐る恐る返事をする。

「申し訳ありません。私はまだすべての社員を把握しきれておりませんので、何とも申し上げられません。須藤さん?どうなのかな?」

課長は無難に切り抜け須藤さんに丸投げした……私は申し訳なくて須藤さんを見上げるしかできない。

「確かに彼女が高卒なのも理由のひとつですが、私としては、彼女が今の仕事をしてくれないと困るからです。審査することより彼女のようにサポートしながら確認してくれる人材のほうが必要ですので。前課長も彼女を信頼しておられましたし。」

須藤さんの言葉に副社長は暫し考え込んでいたが、最後は納得したらしい。

「わかった。考えがあっての配置なら何も言うまい。澤田さんはこれからも頑張ってくれ。今回のことは担当者にきちんと処分を下す。お客さまにはご納得いただけるまで説明し謝罪して返金をおねがいしてください。以上です。」

はい!

副社長の言葉にその場の全員が返事と礼をして会議は終了した。

私は終わったと知ったあとも緊張が抜けなくて立ち上がれなかったので、須藤さんにずいぶんと心配されてしまった。

やっと事務室に戻った時にはほっとして座り込んでしまった。
そんな私を芽衣子は心配して終業時間後も待っていてくれた。
須藤さんには処分云々の話以外ならしても良いと言われたので、帰りの駅までの道すがらに会議室での出来事を話した。

今まではアパートが芽衣子と反対方向で一緒には帰れなかったが、今日からは高嶺さんのマンションだから同じ方向だ。

「なるほど……今回のはさすがに過払い金額が大きいから課長止まりにはできない案件だったわけね~やらかしたの誰か見た?確か初審は二年目の女の子だけど副審は主任だし決済は係長だよね?3人とも処分対象だろうし、しばらく荒れそうね……」
「うん。だろうね……」

私たちは明日からの仕事が円滑に進むことだけを祈りながら帰途についた。

< 105 / 195 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop