はつ恋の君をさがしてる
屋根つきの車庫にサッと車をバックで停めて颯爽と降りた高嶺さんに引きずられるように降ろされた直後の私の抗議に、どこ吹く風な様子でそうか?と返した高嶺さんは硬直化した私の背中に腕をまわすと有無を言わせない力で歩き始める。
私はただそれに押し出されながら歩くだけ……

車庫から玄関までのアプローチがこれまた凄い……

どこの料亭ですか?ってくらいの綺麗な景色で、ついつい周りを見回してしまって足元がおろそかになり、何度も敷石につまづいてしまう。

そんな私を何でもないことみたいにその度に受け止めて気遣ってくれる高嶺さんが、ずいぶんと慣れてる感じがしてちょっと嫌な気分になる。

最近時々感じるもやもやした気持ちと同じ部類のものだとわかるけれど、それがなんなのか?
まだ名前が付けられない感情だ。

ほんの数分なはずなのにずいぶんと歩かされたように感じるアプローチをやっと歩ききって到着したのは、和風なアプローチとは全く違うイメージの洋風な豪奢な装飾の玄関ドアの前だった……

「なんか……あれ?」
思わず呟いた私のささやきに高嶺さんが苦笑いで応える。

「やっぱり変だろ?昔は普通に和風な家だったんだけど、俺が大学生の頃に母のワガママで建て替えたんだよ。庭はお抱え庭師に大反対されて弄れなかったから、なんともちぐはぐな家になっちまったんだ、おかげで恥ずかしくて友達も呼べねぇ……」

「わぁ……そうなんだ。でも凄い大富豪だよね?」

「そうか?普通だろ?」

いやいや!普通じゃないから!

再び抗議するもあっさり無視されて、ドアは開かれた。


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