はつ恋の君をさがしてる
「ただいま!」
玄関に入るなり響いた高嶺さんの大声にビクリと肩を震わせてしまう。

「わるい、無駄に広いから大声あげないと聞こえないんだよ。」
そう言って恥ずかしそうに頭をぽりぽりとかく姿がちょっと可愛い。

「あのねぇ、そう思うなら呼び鈴くらい鳴らしてよ!」
呆れたようにそう言いながら突然現れた人物にさらに驚く。

高嶺さんにそっくりだけどちょっと若い?
高嶺さんのお兄さんの高成さんとは雰囲気の違う男性だった。

「なんだ?来てたのか?」

「もちろん!高嶺兄さんの恋人の初訪問だからね~仕事放り出して参上しましたよ♪で?紹介はまだですか?」

そう言ってニッコリと笑うと本当にそっくり。
ついつい二人を交互に見比べてしまう……

平原さんから三人息子さんがいると聞いているから、彼は会ったことのない三男さんなのだろうと推測する。
そこで、あわてて姿勢をただして頭を下げる。

「あの……初めまして。高嶺さんのマンションでお世話になっております。澤田鈴加と申します。」

と、できるだけ丁寧にご挨拶をする。

そうして頭を恐る恐るあげると……。

目の前の男性がかなり驚いた表情で私を見つめていて焦る。
なんか失敗したかな?
凄く緊張してるからどこかおかしかったんだろうか?不安になって傍らの高嶺さんを見上げてしまう。
高嶺さんは良くやったと言わんばかりに私の頭を撫で始める……

ちょっと!こら!子供扱いするな!

抗議を込めて睨み返すとさすがにやめてくれたので、改めて目の前の男性に向き直る。
するとその男性が……

「うっわぁ♪可愛い♪なにこの生き物♪めっちゃ可愛い!後で写真撮らせて!」

と猛烈な勢いで迫ってくる!

どうしよう!?高嶺さんのご家族だし避けたら印象悪くなるよね?
そう考えて動けなくなった私だが、気がつくとサッと横から伸びてきた高嶺さんの腕に抱えられていて、目の前の男性が途端に険悪な表情で高嶺さんを見返すのが見えた。

「なんだよ!ちょっとくらい減るもんじゃないんだから良いじゃない!」

「だめだ!減る!これは俺のだから触るな!ついでだ!見るな!」

そう言って高嶺さんは私を胸に抱き込むようにして男性の視線から遠ざけようとする。

いきなり始まった兄弟ゲンカらしきものにハラハラする私を無視して二人はヒートアップしていく。
どうしよう?
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