雨夜の星に、願いひとつ
わたしは気を紛らわせるためにテレビをつけた。

そこに映し出されたのは、サッカー日本代表の特集ニュース。

そうだ、今日はワールドカップの初戦があるんだった。今のうちにお風呂をすませて、ゆっくり食事しながら賢二郎とテレビ観戦しよう。

そう気持ちを切り替えたわたしは、足早にバスルームに向かった。


入浴をすませ、食事の用意も完了。冷蔵庫にいれたワインもいい感じに冷えている。テレビには試合前の会場の様子が映し出され、観客の興奮が画面ごしに伝わってくる。

さあ、あとは賢二郎が帰ってくるのを待つだけだ。

今夜は賢二郎の好物ばかり作ったし、部屋中ピカピカに磨いたし、きっと喜んでくれるはず。

おいしいワインを飲みながら一緒に日本チームを応援すれば、よけいなことは頭から吹き飛ぶよね。


なんて考えながらソワソワと待っていたけれど、その思いに反して賢二郎の帰宅は遅かった。

やっと帰ってきたのは、サッカーの試合がすでに後半戦に突入した頃。


「おつかれさま。遅かったね」


賢二郎のはずしたネクタイを受け取りながら、明るく声をかける。


「うん。ちょっと残業があって」

「お腹すいたでしょ。すぐ温めるね。賢二郎の好きなワインも買ってるよ」

「いや、今日はいいや」
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