初恋の君と、最後の恋を。
元々口数の少ない黒瀬先輩との時間は、私が話しかけなければ沈黙に近い。
気まずいというか、黒瀬先輩の貴重な時間を奪って申し訳ないというかーー
「私、帰りますね」
「送るよ」
「大丈夫です。ありがとうございます」
「気を付けてね」
顔を見れずに、背を向ける。
立ち聞きなんてしなければ良かったな。
駅までの道のりをスローペースで歩く。
鈴宮先生は私の知らない黒瀬先輩を知っているのかな。たくさん、たくさん知っているのだろうか。
重い足を止め、前を向く。
本当にこのまま帰って良いのだろうか。
黒瀬先輩が女性にモテることは百も承知だ。覚悟して告白した。
ただ今回は黒瀬先輩が優しく鈴宮先生に接していて、いつもと状況が異なった。
もしかしたら黒瀬先輩も、先生のことが好きなのかもしれない。2人は両想いなのかもしれない。
「ちゃんと聞こう!」
このもやもやした気持ちは、黒瀬先輩と向き合わなければ晴れない気がした。