初恋の君と、最後の恋を。
全速力で公園に戻ると、ベンチで黒瀬先輩は本を読んでいた。
まだ居てくれて良かった…。
足音に気付いた黒瀬先輩は顔を上げて私を見た。
「戻って来るような気がしてた」
数時間ぶりにやっと目を合わせられた黒瀬先輩は優しく微笑んだ。私の大好きな笑顔で。
「黒瀬良斗さん、私はあなたのことが大好きです」
迷わず告げると、先輩は本を閉じて立ち上がった。
「だから余計な詮索をすることを許してください。鈴宮先生に対して恋愛感情をお持ちなんでしょうか?」
答え次第で、私の恋が砕ける。
今日、この公園で私は失恋するのかな。
「また同じことを言わせるの?」
「え?」
「よく知る女性。それだけだよ」
「だけど…香織って……」
「名前を呼ぶことと、好きなことはイコールなの?」
「じゃぁ、なんで!私のことは名前で呼んでくれないんですか?いつも"君"じゃないですか!」
声を荒げる。
目の前に立つ憧れの人に、こんな惨めな姿の自分を晒け出したくないのに。言葉が溢れる。
「私!黒瀬先輩のことが好きなんです!どうしようもなく、好きなんです!」
バッグが地面に落ちたが、構わずに叫ぶ。
「婚約者がいるのに!毎日、黒瀬先輩のことで頭がいっぱいなんです!」
ああ、遂に言ってしまった。