初恋の君と、最後の恋を。
「実用的な会話に聞こえるけど、留学の予定でもあるの?」
鋭いですよ、先輩。
リスニングを少し聴いただけで見破られてしまうのか。
「親に進められていまして」
電車の走行音と、新聞をめくる音だけが響く車内。いつもより小さめの声で先輩は言った。
「あまり乗り気ではなさそうだね」
その通りなんです。
素直に心のうちを晒していいものか迷う。
高校生にもなって親の言いなりって恥ずかしいことだよね。
「親の引いたレールの上を歩くなんて、ありえないですよね」
「そう?親孝行だよね」
小説を閉じて先輩は窓の外を見た。
「俺は親不孝なことしかしてこなかったから、君が羨ましいよ」
え?
親不孝??
誰が誰を羨ましいって?
先輩の口から飛び出た意外な言葉に首を傾げる。
「こんなにも自慢の息子はいないと思いますよ?」