初恋の君と、最後の恋を。
次の駅に停車し、また密度が上がる。
一人当たりのスペースが少ない車内で、先輩と腕が触れ合う。
いつもより近いよ…。
「実は家出をして、今は親戚に面倒見てもらってるんだ」
「え?」
再び走り出した電車で、先輩は初めて私の質問以外のことを話してくれた。
「親御さんと仲悪いからですか?」
「両親、兄ともに上手くいかなくて」
穏やかな表情で語ってはいるが、決断前の葛藤はどれほどのものだったのだろう。
家庭の事情で高校生が親元から離れることはよくあることかもしれないけれど、私の周りでは珍しいケースだ。
少なくとも私にはそんな勇気がない。
「みんなが思っているよりもずっと俺はワガママで自己中心的な男だよ」
「そんなことは…」
どうだろう。
成績優秀、スポーツ万能、容姿端麗。
加えて性格の良さ。
少し距離が近くなれば誰でも知ることができる彼についての情報はポジティブなものばかりだけど。
本当の彼の心はどこにあるだろう。