初恋の君と、最後の恋を。
イヤホンをとり、先輩の方を向く。
「安心しました」
「安心?」
「先輩にも少し後ろめたいことがあるんだなって。完璧じゃないんだなって、安心しました。話してくれてありがとうございます」
「ありがとうね…」
バッグにイヤホンをしまう。
自主的に聴いているわけではないリスニング。
私は先輩のように自分の意思で動いてこなかった。
「事情はよく分からないですけど、やっぱり先輩は凄いですね」
「褒められるようなことではないよ」
「そうかもしれませんけど、親のレールから逃れられない私からみたら先輩は凄いです」
"あなたは留学すべきよ"
母からの命令を受けた日、
たくさんの反発の言葉を投げ付けたけれど、取り合ってはもらえなかった。
せめて1年は待って欲しいと頭を下げ、どうにか許しを得た。
留学する前に、どうしても私は黒瀬先輩と親しくなりたかった。
日本から離れる最大の心残りは、"黒瀬先輩への想い"だったから。
1年後、失恋した私は何の迷いもなく日本を発てると思ったのに。
先輩の答えはいつも"ありがとう"で、私はまだ失恋できずにいる。
フラれる覚悟なら、もうできてるのにな。