初恋の君と、最後の恋を。
そっと手を差し出される。
汚れた手では申し訳なくて首を振る。
地面に手をついた際に土と砂で汚れてしまった。
「やっと俺に愛想尽かした?」
「まさか。その方が楽ですけどね」
「じゃぁ、どうぞ」
爽やかな言い方だ。
この人は私を困らせるために動いているのだろうか。
しゃがみ込み、背中を向けた黒瀬先輩の意図が分かり、上手く反応できなかった。
「俺が原因だから」
「え?」
「俺が君に冷たくしたことにより、彼女たちが大きく出たのだろうから。ごめんね」
「黒瀬先輩のせいじゃないです」
立ち上がろうとすればズキリと足に激痛が走る。なかなか治らないな。
「…私が、あなたを好きになったことが悪いんです」
黒瀬先輩に迷惑をかけて、仁くんを傷付けて。
全て自分の蒔いた種だ。
「でもこの気持ちは止められないから…あなたを好きでいさせてください」
「そういうことなら、ほら。乗って」
「重いですよ」
「構わないよ」
2度目のおんぶ。
こんな状況であっても幸せだった。