初恋の君と、最後の恋を。
鼻歌まじりで教室に入る。
既に賑やかなお喋りを繰り広げているクラスメートの視線を感じたが、無言のまま席に着く。
最初のうちは自分から挨拶をしていたけれど、いくら大声を張り上げても返事はなかった。
だからもう諦めた。
友達を作っても、すぐに離れることになる。
辛い別れはいらない。
下を向いたままイヤホンを取り出す。
ひとりの世界に入ろうとした途端、なぜか教室の雰囲気が変わった。
一瞬にして話し声が消え、視線が一斉にある女子生徒に集まっていた。
大きすぎるマスクは小顔な彼女の顔の大半を覆い、ミディアムヘアーの傷んだ金髪。
黒髪か暗めの茶髪が多い校内では彼女の出で立ちはとにかく目立つ。
鋭い目つきで浴びた視線を一蹴し、バッグを机に投げ付けた。
「ちっ」
盛大な舌打ちに凍りついた教室。
彼女の名は、
小林 雅美(こばやし みやび)
クラス替えの初日、担任から上級生に殴りかかり停学中だと聞かされていた。
彼女にとっては今日が2年生に進級して初めての登校日だ。