ワケありヤクザと鈍感少女
その時、彼はいきなり私に

ゆっくりと抱きついてきた。

彼の体からは、アルコールのような匂いがした。

突然の出来事に私は

「・・・え、あ、あの。」 と聞くことしか出来ない。

雨に打たれ、弱々しく震え、

まるで私の体温を求めるかのような彼の体を私は

とっさに抱きしめていた。

すると、彼の私を抱きしめる力が強まる。

「・・・な、んで」

「・・・え?」

彼が何か言った。

しかし、雨の音でまったく聞き取れない。

・・・とにかく今は彼を助けなきゃ。

その一心で、彼を立たせようと試みた。

意外にも彼の体は軽く、

難なく起こすことに成功した。

・・・カツン

私の手に彼のズボンのポケットに入っている

固い感触の物が当たった音がした。

が、今は気にしている暇はない。

私は彼を助けたい一心で自宅へと運んだ。
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