ワケありヤクザと鈍感少女
すぐ後ろから響く低い声。

殺される・・・!

私は恐怖で目をつぶる。

「・・・何もしねぇーよ。」

「でもあなたは鈴木組の…」

「・・・ちっ。バレてたか。

・・・素性バレてたとしても、

命の恩人殺すほど悪人じゃねぇーよ。」



私は安心したのか、怖いのか、

怯えているのかなんなのか

複雑な気持ちになり、自然と涙が溢れてきた。

「・・・うっ。うっ。」

「・・・いきなり泣きだすなよ。」

そう言って泣き出した私を優しく抱きしめる。

彼の体からはまだほんの少しだけ、

アルコールの匂いがした。

彼の体はさっきまで冷たかったのに、

この数十分で暖かくなっていた。




「・・・お前、俺のこと助けてくれただろ。

その…ありがとな。」

体温が一気に高くなる。

「おい、お前なんか今熱くなんなかったか?」

「・・・な、なってないですよ!

あ、あの、一旦離れてください!」

体温が上がったことがバレないように、

彼から離れる。

「・・・わかった。

その代わり、その手に持ってるの頂戴。

素人に持たせとくのは危ねぇから。」

私は拳銃を彼にそっと返す。
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