伝説に散った龍Ⅰ
彼らは呆気に取られた表情で私の背中を見送った。
私は早足で伊織の元へ。
「…何も無いといいけど」
いつもみたいに、ただの言い争いなら。
半ば祈るように
校舎裏へと続く廊下を急いだ。
「……、え」
咲良がよく
伊織との密会の場所に選ぶ校舎裏。
今までにもあったことだ。
咲良が『話したい』と言って伊織を連れて行く。
様子を見に行けば
二人は決まって髪の毛を引っ張りあっていた。
私が行けば収まる。
どうやら、その程度の戦いは終わってしまったようだ。
思わず私で私の目を疑った。
相手が女の子一人だった
以前と、明らかに違う。
「…うそ」
十数人。更にそのほとんどが男。
伊織を取り囲んでいるであろう彼等は
実に下品な笑みを顔に貼り付けていた。
私の中で音がした。
理性が切れる音が。