伝説に散った龍Ⅰ









「ねえ」



「…円堂さん」



「なにしてんの?」





自分でも驚くほど低い声が出た。







「何って、見てわかんない?」



「…」



「ちょーっと伊織ちゃんは調子に乗りすぎだよね。戒めてあげなくちゃ」







咲良の甲高い笑い声が、私の脳内を反芻する。







「だって気付いてないんだもん、この子。自分がどれだけ私に不快な思いをさせてるか」



「…」



「だからその身をもって教えてあげるの。え?私優しくない?」



「…うん、優しいね」



「でしょ?話わかるね芹那ちゃん」






































───咲良の頬に、私の拳は深くめり込む。



強い憎悪を連れ立って。



出口のない暗闇に



彼女の魂ごと堕ちていく。
























「自分の罪を、まさか自分から自白してくれるなんて」



「っ、は、あ、っが」



「優しい子。慈悲深い子。」







その顔がみるみる歪んでいく。



はじめの一発以降、顔には手をつけなかった。



苦痛に歪む、それでいて小綺麗に化けた顔を見ようと思って。



私の思惑通りに歪んだその顔を眺めて



心中、赤黒い怒りで満たされる。











< 32 / 113 >

この作品をシェア

pagetop