ちゃんと伝えられたら
そして寺本さんは力強く私を引っ張ると…。

ほんの一瞬だったとは思うのだけれど…。

「寺本さん、やり過ぎでしょう。」

坂口さんは低い声を出したが、少し震えているように感じる。

「こんな所で時間を割いてばかりもいられません。会社に早く戻らないと。では、今日はここで。」

そして真っ赤になって動けない私に、寺本さんは笑顔を向けた。

「これで正々堂々と篠田さんに向かい合えます。俺の事もちゃんと考えて下さいね。」

私達に余裕で手を振って、寺本さんは戻って行った。

寺本さんに握られた手首が痛い。

ぼんやりとしながら、私が感じたのはそんな事。

「篠田、行くぞ。」

今度は坂口さんに腕を取られる。

「あっ、はい。」

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