ちゃんと伝えられたら
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「さあ、食事にしましょう。」

「済まないな、こういう時に俺は何も手伝えない。」

ワンルームの私の部屋にどんと座り込んでいる坂口さん。

どうも落ち着かないみたいで、坂口さんは部屋の中をきょろきょろ見ている。

「それにしても、うちの給料ならもう少し広い所に移れるんじゃないのか?」

坂口さんはそんな事を聞く。

「学生時代にここへ来て、特に不自由もなかったので…。」

私は苦笑いをする。

特に最近は坂口さんと一緒で仕事が忙しく、慣れ親しんだ場所から引っ越す事すら思いつきもしなかった。

「坂口さんのマンションは会社から近くていいですね。」

さっき居た坂口さんのマンションの様子を私は思い出していた。

「もう少し時間があれば、ちゃんと片づけられたのに。」

私は坂口さんを待っている間、居てもたってもいられなくて、掃除を始めていた。

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