ちゃんと伝えられたら
「志保ちゃん!」

私はその声に、我に返った。

「大丈夫か?」

道人さんが帰って来たようで、心配そうにベッドのそばに座って、私の手を握っている。

「あ…、綾人さん?」

私の朦朧としたつぶやきに、道人さんは首を振る。

「ここには兄貴はいないよ。」

そして握っている私の手にキスをした。

「俺はずっとそばに居るよ。だから…、だから安心して。」

私はキスされた私の手に目を向ける。

そして、道人さんにうつろな目を合わせる。

やっぱりこんな時の私は涙がぽろぽろこぼれるばかりで…。

「泣いていいよ。ううん、思いきり泣きなよ。」

そんな優しい声を掛けられたら…。

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