ちゃんと伝えられたら
坂口さんは何となく話を逸らしたそうだ。

「すぐに会社に連絡を入れなくていいんですか?」

私は呑気な様子の坂口さんに首をかしげた。

「たまには取引先にその場を穏便にごまかさなくてはならない時もある。」

「えっ?」

もしかして私の念じた事を感じ取ってくれた?

「篠田、あの日も雨が降っていたな。」

坂口さんは車を走らすと、急に話を変えた。

坂口さんが言う私との雨の日は、きっとあの日の事だ。

車の外は会議中より雨が強くなって来たようだ。

少々坂口さんの言葉も聞き取りにくい。

「あんなにずぶぬれになって、次の日に熱を出してしまうなんて散々な日でした。」

私は恥じらいながら、苦笑いをする。

「会社に連絡を取ったら、篠田が買い物に出たと聞いた。そうしたら何となくその買い物先に向かっていた。」

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