教育係の私が後輩から…
「どうして専務が…?」
専務はたまたま同じフロアーに居たらしく、私の叫び声に駆けつけてくれたらしい。
そして、意識を失ってる私を抱え、七本と一緒に病院へ運んでくれたと、七本が話してくれた。
「すいません。専務にまでご迷惑をおおかけして…」
「大した事がなくて、ホント良かった。それより、何があったのかな? 彼の話だと事故じゃ無いみたいだが? 誰か心当たりは?」
専務の問いかけに、私は首を振った。
多分あの人だと思う。
でも、なんの証拠もない。
安易に名前は出す事は出来ない。
「突然の事で…」
「女だと思うんだけど、俺の所からは、手だけしか見えなくて、顔は見えなかったんだ。ごめん。」
「七本が謝る事じゃない。でも、七本が声掛けてくれたお陰で、軽く済んだと思う。有難う。」
七本も顔見ていないなら、なおの事名前を出すわけにいかない。
「多分、前回と同じ人だと思う。」
「前回って、前にもあったのかね?」
驚く専務に七本が、今までの事を事細かく話した。
「そんな事が…?
でも、私の耳には入ってきてないが?」
「はっきりした事では無いので…上にも報告してませんでした。」
「専務、あなたが関わってるって事はありませんか?」
七本はいまだに専務を疑っている様だ。
「七本!専務に失礼よ!?
専務は何も関係無いって前にも言ったでしょう!? 痛っ…」
興奮したせいか頭が痛い、背中が痛い、腰が…
身体中が痛い。
あっ…
「大丈夫か? 先生呼ぶか?」
七本の問い掛けに首を振った。
「大丈夫…それより赤ちゃん…は?」
私の問い掛けに、今度は七本が首を振った。
それを見て思わず涙が溢れて来た。
望んではいなかったけど、階段から落ちる際、私は咄嗟にお腹を庇った気がする。
ごめんね?
守ってあげれなくて…
「違うんだ。出来てなかった。」
「え?」
「妊娠して無かったらしい。」
「マジで?」
重々しい表情で頷く七本。
「やっだぁー!
なんだ出来てなかったのか?
良かった〜!人騒がせだよね?私。
あー恥ずかしい。でも、良かった。」
「佐伯…
本当は…
欲しかったんじゃ無いか?
うわごとの様にずっと ”赤ちゃんが”って言ってた…から?」
「な、何言ってるのよ?
出来てたら、マジ困るし!
私まだ、仕事辞めたく無いし!」
「…そっか? そうだよな!
でも、ホント良かったよ! どこも異常無くて!
ホントお前って丈夫いよな?」
「鉄壁の女なんで? 打たれ強いですよ!」
誠一郎との、結婚を望んで居ないと言いながら、お腹を庇っていた自分がいて、無意識にも赤ちゃんを心配してた私。
本当は彼との幸せを求めているじゃ無いかって…
考えてもどうにもならない事なのに、考えてしまう。