教育係の私が後輩から…
「どうして…?」
「え?」
「どうして、こんな事するんですか!? セクハラですよ!?」
「泣いてる女性を、ほっとけないたちなもんでね? あっそれから、これを君に、良かったら使って下さい。」
専務が私へ差し出した物は興信所の名の入ったA4サイズの封筒。中には、何枚かの書類と写真が入っていた。
「専務タバコ吸われますか?」
「うん。たまにね? でも妊婦さんは止めたほうがいいよ?」
「そうですね? 最後の1本にします。 1本だけ頂けますか?」
最後の一本どころか、私は、タバコなんていちども吸ったこと無い。
何も知らない専務は、タバコとライターを渡してくれた。
「ありがとうございます。」
私は受け取ったライターで、タバコではなく、興信所の封筒に火を点けた。
「あっなにするんだ!?」
「これはもう必要ないですから?」
「もしかして、君は全て知っていたのかい?」
「………」
「誠一郎君も厄介な人を好きになったもんだ…」
「結婚だけが幸せじゃ無いし… 私、ずっと仕事に打ち込んできて、充実した毎日だったんですよ?
それなのに…」
「誠一郎君が現れた?」
「そりゃー結婚したく無いって訳じゃないけど、結婚だけが幸せじゃ無いし、今の仕事にやりがいは感じてました。 私の両親、離婚してるんです。
突然、大好きだった父親が、私に一言も無く家を出て行ったんです。
専務に分かりますか? その時の私の気持ち!
突然突き付けられた、両親の離婚。
そして、後に聞いた真実。
父は私が出来たから、仕方なく、母と結婚したらしいです。」
「親は子を選ぶ事は出来ても、子は親を選べないからね…?」
「最近良く夢にみるんです。 父が家を出て行った時の事を…
誰かと夫婦になっても、いつか崩れてしまう幸せなら、求めない方が良いじゃ無いかって…」
「誠一郎君が、君を捨てた父親と同じだと?」