限りない愛~甘い彼に心揺れて~
「えっ、早退? そんな大げさな……えっと、多分冷気が鼻に入っただけなので、大丈夫ですよ」

「いや、でも、風邪は万病の元というし、熱はない? 病院に行ったほうがいいかな」


必死で風邪ではないと言うのに、大ちゃんはまだ疑っていて、私の額に手を当てて、体温を確認する。

引き始めで病院に行くなんて、聞いたこともないし、そもそも熱はない。何を言えば、風邪ではないと納得してくれるのだか。


「プッ、あはは!」

「社長、笑うのは失礼ですよ。でも、笑ってしまいますね」


私たちのやり取りを静かに見ていた社長と秘書がいきなり笑いだす。まさか笑われるとは思わなく、大ちゃんと私は笑う二人に驚きながら、顔を見合わせた。


「たかがくしゃみを1回しただけで、風邪かほこりかと大騒ぎするなんて、小さい子どもを持つ母親でもなかなかしないよ。大人である宮坂さんにそんなにも慌てるなんて……過保護だね」

「過保護?」


社長に指摘された大ちゃんは私の額から手を離して、その手を見る。

過保護と言われるとは思っていなかったのだろう。だけど、この慌てぶりは過保護と言われてもおかしくない。それに少し前にも同じことがあって過保護だと言われていたことを思い出す。
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