限りない愛~甘い彼に心揺れて~
副社長と同じことを兄にまで言われて、専務が撮った写真を見ている彼の横顔をそっと見る。

副社長じゃなくて、大ちゃんとしてか……。

何度見ても副社長にしか見えない。まだ私の中では副社長と大ちゃんが完全一致していない。

昔の話を聞いてなんとなく思い出したけど、本当は昔の大ちゃんの顔もぼんやりとしか思い出せていない。

思いだせないのが、悔しくなる。


「ねえ、お母さん。大ちゃんと写ってる写真あったっけ?」

「あるわよ。真帆と大ちゃんのと、幹太も一緒なのも。そんなに多くはないけど」

「帰ったら、アルバム見てみる」


写真を見たら、忘れていた日々を思い出すかもしれない。そうしたら、副社長じゃなくて大ちゃんとして見れるかもしれない。

微かな期待に胸を弾ませて、亜由のかけっこを応援した。年長組になると、速い子の走り方はしっかりしていて感心する。亜由は速くも遅くもなく平均的だった。

それでも、がんばる姿に成長を感じて私たちは喜んだ。


「終わったら、うちの店でお疲れ様会するから、大祐も誘ってみるか。真帆、誘ってこいよ」

「私が?」

「そうだ。真帆が誘えば、絶対喜んで来るから」

「そうかなー」
< 37 / 202 >

この作品をシェア

pagetop