限りない愛~甘い彼に心揺れて~
「ありがとうございました」

「お疲れ様。真帆、明日よろしく」

「はい、副社長もお疲れ様です」


手をあげる副社長に頭を下げる。静かに走っていく車を見ながら、副社長が触れた頬に手を当てた。頬の方が手の温度よりも熱かった。

冷たい手で、冷静さを取り戻した。


土曜日の夕方。

天気が1日曇りだったからか、いつもよりも暗くなるのが早い。薄暗くなってきたリビングの電気をつけて、ソファに座る。

キッチンで料理をしている母が顔を出して尋ねた。


「大ちゃんは、そろそろ来るの?」

「うん。約束の時間まであと五分だからそろそろたと思うよ」


外に出て待とうかと腰をあげたとき、インターホンが鳴る。「はい、はーい」と母がテンション高い声でモニターの前へと行く。

私はバッグを抱えて、玄関へ向かった。モニター越しでの挨拶はすぐに終わって、私がパンプスを履いているとバタバタと慌ただしく母が私の元へ来た。

なんで、わざわざ玄関まで?

母の行動を訝しく思いながら、ドアを開けると、にっこりと頬笑む副社長が目の前に現れた。思いの外の近距離に思わず体が仰け反る。
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