蜜月は始まらない
……けど。



「あの……」

「うん?」



こちらが座っているから、いつにも増して高い位置にある錫也くんの端整な顔。

私からの若干戸惑った眼差しを受けて小首をかしげる彼に、おずおずと言葉を重ねた。



「錫也くん? どうかした……?」

「なにが?」



じっと目を合わせ、おまけにその大きな手のひらでわしゃわしゃと私の髪をかき混ぜながら、本気でわからない様子の錫也くんが聞き返してくる。

いや……さっきからずっと、頭撫でくりまわされてるんだけど。

こんなスキンシップ、今までされたことない。
だから最初はドキッとしちゃったとはいえ……あまりにも豪快な手つきに、なんだかペットにでもなった気分だ。

もしかして錫也くん、わかりにくいけど結構酔ってる?



「あー、錫也今日飲まないっつってたのに、結局そこそこ飲まされたのか」



カウンター席からこちらにやって来た久我選手が、おもしろそうに言いながらすみれちゃんの横に立った。

ちなみにこの彼も、ウィングスの中では錫也くんと1、2を争う人気っぷりのスター選手だ。

勝利に貢献する活躍もさることながら、その整ったルックスから“レーザービーム王子”なんて愛称をファンがつけるほど。

数年前、試合後のヒーローインタビューの壇上でまさかのプロポーズをしたときは、当時ニュースでもかなり取り上げられてたっけ。
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