蜜月は始まらない
「これね、今度やるホームゲームのチケット。よかったら友達誘っておいでよ」

「わ。もらっちゃっていいんですか?」



渡されたチケットを握りしめて思わず尋ねると、宗選手はイタズラっぽく笑いながらうなずいてくれた。



「もちろん。これ、スズくんには内緒ね? スタッフに手配して、試合のあとスズくんと裏で会えるようにしてあげる。サプライズサプライズ!」

「え……えぇ~?!」



狼狽える私にものすごくイイ笑顔を向け、ひらひらと片手を振る宗さん。

今日で、なんとなくわかった。錫也くんと一緒に家具を選んでくれた先輩って、きっと宗選手だ。

錫也くん、かわいがってもらってるんだなあ。本人がそれを望んでいるかはさておき。



「ありがとうございます。ぜひ、行かせてもらいますね」



思わず頬を緩ませ、少し先で待っている錫也くんに聞こえないよう小声で返す。

笑顔のままうなずいた宗選手に最後にもう一度会釈して、錫也くんのもとへと駆け寄った。



「……宗さんと、何話してたんだ?」



タクシーが走り出し、窓越しに手を振っていた私が前を向いたタイミングで、右隣に座る錫也くんがボソリと尋ねてくる。

眠そうにドアトリムに頬杖をついて窓の外へと目を向けている彼に、どうやら先ほどのやり取りを見られていたようだ。

私はいたって平静を装いつつ答えた。
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