蜜月は始まらない
首を横に振って、ニコッと笑った。
柊くんも微笑んでくれて、それだけで私の心はあたたかいものでいっぱいに満たされる。

結局彼はその後ごはんとお味噌汁をそれぞれおかわりし、すべての食器の中身を綺麗に完食した。

柊くんはひとくちが大きくて、めちゃくちゃ食べっぷりがいい。さすが現役アスリート。

それでも姿勢や箸使いは綺麗なので、そのアンバランスさになんだかドキドキしてこっそり見とれてしまった。

ゴクゴクと喉を鳴らしてグラスのウーロン茶を飲む姿なんか、もう、色気がすごくてガン見です。
抗えずに邪な目を向けてしまった自分が情けなくて申し訳ない。

汚れた食器類は、なんと柊くんが洗ってくれた。

今後も家事はできるだけ分担していこうって。
明確にきっちり分けるんじゃなく、基本的に気づいた人がやるというスタンスにしようということに話がまとまる。

ああ、なんだか、今のところこの同居生活すごく順調だ。

こんなにうまくいっているのは、果たしていいことなのか……いずれ終わりが来ると確信しているだけに、なんとも言えず胸の奥が切なくなる。

テレビのバラエティ番組を流し見ながらそんなふうに考えていると、食器洗いを終えた柊くんが私のいるリビングのソファへとやってきた。

一応ちょこっとだけ端にずれれば、当然のように彼は右隣に座る。

その距離の近さにいちいち鼓動を早めている私を、やけに真剣な表情で見つめてきた。
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